クリアネス
次の日の朝、チェックアウトの時間より30分早く、アキラさんが迎えに来た。
「眠れた?」
「はい」
「ほな行こかあ」
群青色のミニクーパーに乗りこみ、高速を走る。
「大阪は初めて?」
「あ、はい」
「彼氏さんの方は?」
「あ、俺も初めてです」
1晩明けて少し落ち着いたのか、レオの顔にはわずかに血色が戻っていた。
それを横目で見て、ホッとした。
「天気いいから窓開けよか!」
エリコさんがそう言って、助手席の窓を全開にした。
本格的な夏が近づいていることを感じさせる、さわやかな風が入ってくる。
心地よくて、あたしも後部席の窓を開けた。
レオの金色の髪が、突風に吹かれた稲穂のように揺れていた。
アキラさんとエリコさんの夫婦漫才に笑わされているうちに、いつの間にか車は大阪に入っていた。
高速を下りて、一般道に出る。
同じ都会でも、東京や名古屋とはまったく違う、様々な主張が交じり合った町並み。
ああ、こりゃある意味外国だ。
パチンコ店かと見まがうようなド派手なスーパーや
激安価格をやたら強調した看板。
東京から遠く離れたことを思い知らされ、それを安らぎに感じた。