クリアネス
「オモロイやろ?」
「はい」
「自分の足で歩いてみたら、もっとオモロイ発見あると思うで。やたらキャラの濃いおばちゃんばっかりやし」
アキラさんの言葉に、あたしはクスクス笑う。
「アパートまでは、もうちょっと距離あるから。ゆっくりしとき」
「はーい」
あたしはシートに深く体をあずけた。
レオは外の景色に見入っているのか、反対側の窓を向いたままだ。
表情が見えないレオの姿を、あたしは隣で見つめた。
「俺……」
「ん?」
BGMに消されそうなくらいの小さな声で、レオがつぶやいた。
「……ずっと、透明人間になりたかった」
ゴオォォ……と、大型トラックがすぐ横を走り抜けていく。
開けた窓から、ガソリンのにおいがした。
吐きだされた排気ガスが景色を黒く染め、すぐに流れた。
「……うん。あたしもだよ」
そう言うと、レオは少し嬉しそうに笑って、あたしの手を握った。
ねえ、レオ。
本当はあたし、気づいてるんだ。
かわいそうだったはずの、おとぎ話のお姫様が、どうして王子様に助けてもらえたのか。
……あの人たちには最初から
ハッピーエンドが用意されていたんだね。