クリアネス

「オモロイやろ?」


「はい」


「自分の足で歩いてみたら、もっとオモロイ発見あると思うで。やたらキャラの濃いおばちゃんばっかりやし」



アキラさんの言葉に、あたしはクスクス笑う。



「アパートまでは、もうちょっと距離あるから。ゆっくりしとき」


「はーい」



あたしはシートに深く体をあずけた。



レオは外の景色に見入っているのか、反対側の窓を向いたままだ。



表情が見えないレオの姿を、あたしは隣で見つめた。




「俺……」


「ん?」



BGMに消されそうなくらいの小さな声で、レオがつぶやいた。




「……ずっと、透明人間になりたかった」





ゴオォォ……と、大型トラックがすぐ横を走り抜けていく。


開けた窓から、ガソリンのにおいがした。


吐きだされた排気ガスが景色を黒く染め、すぐに流れた。




「……うん。あたしもだよ」




そう言うと、レオは少し嬉しそうに笑って、あたしの手を握った。










ねえ、レオ。


本当はあたし、気づいてるんだ。



かわいそうだったはずの、おとぎ話のお姫様が、どうして王子様に助けてもらえたのか。






……あの人たちには最初から


ハッピーエンドが用意されていたんだね。





< 202 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop