クリアネス
第13章【十日間】
「ここが俺の部屋ね」
そう言ってアキラさんが案内してくれたのは、大阪の中心から少しだけ離れた住宅街にある、ワンルームマンションだった。
引越しを控えているというだけあって、少し殺風景な感じの部屋。
部屋の隅にはガムテープで封をしたダンボール箱が並び、本棚の中はすっかり空だ。
「物少ないから、不便かもしれんけど」
「そんな……。充分です」
2週間。
とりあえず2週間はここで隠れていられる。
充分だと思った。
何も必要ないよ。
あたしとレオ以外、何も……。
「けど、これ捨てる前で良かったわ」
言いながら、アキラさんはクリーム色の合皮張りのソファに座る。
「これ、ベッドにもなるから。さすがに寝床なしはキツイやろ?」
アキラさんがソファの背もたれを手前に引くと、カチャカチャと音を立てながらリクライニングが倒れ、平らになった。
「食器類は、多少残ってる。勝手に使ってくれてええから」
てきぱきと部屋の中を確認するアキラさん。
あぁもう、こんなことならいろいろ残しとけばよかった、とかブツブツ言いながら。
「ところで、大阪見物がてらに、今晩は一緒に外食とかどう?」
突然のエリコさんのその言葉に、あたしたちは固まった。
街を徘徊するのは、どうなんだろう……。
やっぱりマズイ気がする。
いくらここが遠く離れた土地でも。