クリアネス
あたしたちがマネキンのように黙りこくっていると、
「ちょっとちょっと、どうしたん?」
と、エリコさんはあたしとレオの顔を交互に見て、苦笑いした。
「家出してきたからって、いくらなんでも大阪まで探しに来るわけないやん」
「……」
あたしたちは深くうつむき、言葉に詰まる。
何か言わなきゃ変だ。
そう思うんだけど、うまく言葉が出てこなかった。
「何をそんなビビッてるんか知らんけど」
しばらく黙っていたアキラさんが、口を開いた。
「あんまり気張ってたら、バテてまうで。気楽にいこ」
まるで干したてのシャツみたいに、ぽかぽか暖かいアキラさんの笑顔。
「……はい」
気づくと肩の力が抜けていた。
「ほんなら夕方の6時に、マンションの下で」
「オッケーです」
エリコさんの部屋へと帰っていくふたりを、玄関で見送る。
エレベーターが下りていくのを見届けて、鍵を閉めた。
「気張りすぎ、かあ」
あたしの右隣、ほんの少し上からレオがつぶやく。
「確かにそうだったかもな」
「そうだね」
あたしは窓を開けて、ベランダに出た。