クリアネス
夜になって、アキラさんたちに連れられて訪れたのは、コテコテの浪花の街、ミナミ。
「これが、阪神ファンが飛びこむことで有名な戎橋」
「へ~、思ったより新しいんですね」
「最近リニューアルしてん」
橋のそばにはあのグリコの看板があって、これにはあたしもレオもかなり興奮した。
「すげー、テレビで見たのと一緒だ!」
って、ふたりしてはしゃいだ。
そんなあたしたちを見て、アキラさんはあきれ顔だ。
「俺らが初めて東京タワー見た時と、おんなじ心境なんやろな」
その言葉に、ちょっと恥ずかしくなった。
だけどレオは気にせずはしゃいでいる。
いつも通りのレオだから、嬉しくなった。
道頓堀川は街のネオンを反射して、キラキラ、キラキラ、虹色にゆらめく。
きれいだな……なんてボンヤリ眺めていたら、エリコさんが「ここやで」と、こぢんまりしたお好み焼き屋さんを指差した。
慣れた様子でエリコさんは店の引き戸を開ける。
ガラガラという乾いた音は、レオの家を思い出させた。
テーブルがふたつとカウンターしかない店内は満員で、甘いソースのにおいが充満していた。