クリアネス
「なんとまあ、今日はえらい美男美女連れてきて」
「そやろ?」
アキラさんがニヤニヤしながら言う。
おばさんは目を輝かせ、
「なんかふたり見てたら、若い時の私とお父さんみたいやわー。うちらも昔は男前とベッピンで通っててなあ……」
と、まるで弾切れを知らない機関銃のごとく勢いよく話し始めた。
あっけにとられているあたしたちに、アキラさんは小声で
「おばちゃん、1日1回はこの話するねん」
とささやいた。
思わず、プッと吹き出すレオ。
「……何笑ってるん?」
おばさんはテーブルをふきながら、不思議そうに首をかしげた。
おしゃべりなおばさんが作るお好み焼きは絶品で、店が満員なのも納得できた。
気がつけば1枚ペロリと平らげて、久しぶりに食欲がわいたことに自分でも驚いた。
「よっしゃー、2軒目行くか」
「さんせーい!」
アキラさんの提案にあたしたちは拍手する。
お好み焼きを食べながら飲んだ生ビールのせいで、少しほおが熱かった。
店を出ると、むわっと広がる熱気に襲われた。
今夜は熱帯夜だ。
街にあふれる女の子たちの露出の高い服装が、暑さを物語っていた。