クリアネス
すぐにはメールを開かず、送信元をざっとチェックする。
ミカ、ツヨシ、アキヒト。
おなじみの仲間たちの名前。
それに、お母さんからも。
メールの送り方なんか、今まで知らなかったくせに。
この10日間に送ってきた相手の名前、全てに目を通し……
そして自分の中で、何かが崩れていくのを感じた。
普段なら受信ボックスのほとんどを占領していた名前が、見つからない。
見つけたくはなかった名前。
だけど……。
「大丈夫? 顔、青いよ」
レオがあたしの背中をさすりながら言った。
「あ、うん……平気」
あたしは大きく息を吸って、速まる脈を落ち着かせる。
ついさっき届いたメールはミカからだ。
恐る恐る開いてみて、あたしは思わず画面から目をそらしたくなった。
【大学の友達が、昨日大阪でさくらに似た人を見たって言ってたんだけど。今、どこにいるの?】
あたしは無言で携帯をレオに手渡し、うなだれた。
レオの小さなため息を右耳で聞きながら痛感する。
あたしたちは夢を見すぎていたんだ、と。
このままこの土地で、静かに暮らしていけるんじゃないか。
そんな期待を、胸のどこかに抱いていた。
普通に笑って、普通に眠って
時々ケンカしたり
「好き」という言葉を伝え合ったり。
そんな、ありきたりの幸せを、あたしたちも手に入れられるんじゃないかって……
夢を見てたんだ。