クリアネス
「うん、それがええわ」
とアキラさんもうなずいた。
家出して何年も帰っていないふたりが、唯一連絡を取っている身内というのが、そのおばさんらしい。
白浜……。
「あたしはそれでオッケーだけど、レオは?」
首を右に回して見ると、そこにはあたしを見つめるレオの笑顔。
「うん。俺もそれでいいと思う」
こうして、次の土地が決まった。
「明日にはこの町ともお別れかぁ」
エリコさんの部屋からの帰り道。生活のにおいがなじんだ町並みを見つめ、ポツリと言った。
一定の間隔で走り抜けて行く、無数のテールランプ。
道沿いの焼き鳥屋から聞こえてくる、陽気な笑い声。
そのひとつひとつを心に焼きつけておこうと、ゆっくり歩くあたし。
そして、その斜めうしろを同じ速度で歩くレオ。
「さくら」
「ん?」
「ホントに大丈夫? 無理してんじゃ……」
「大丈夫だって」
レオの言葉をさえぎり、あたしは空を見上げた。
そこに広がる都会の夜空は、街の灯に照らされて、薄紫とグレーを混ぜたような色に見える。
「ホント、アキラさんには世話になったよな」
少し足を速め、あたしの隣に並んだレオが言う。
「ホントだよね」
「……頑張ろうな」
「頑張れるよ」
――レオがいるなら。
心の中でそう続けて、あたしはレオの体にもたれた。