クリアネス
あたしのほおに落ちてくる、やわらかい髪。
「レオ……」
大好きだよ。
昔っから飽き性のあたしだけど
……“レオが好き”
この言葉だけは、何回想っても飽きることがないんだ。
「さくら、顔赤い」
唇が離れたのと同時にレオが言う。
「そ、そんなことないっ」
もう何度も交わしたキスだけど、そのたびにあたしの鼓動は速くなって、こうしてレオにからかわれることもしょっちゅうだ。
「いや、赤い。風呂上がりみてー」
「やだ、見ないでよっ」
恥ずかしさをごまかすため、あたしは近くにあったテレビのリモコンをとっさに手にした。
何気なしにつけたチャンネルに、映像が映しだされる。
その瞬間、空気が冷たく止まった。
『20代男性、車にはねられ即死』
画面の右下で小さく躍る文字に、血の気が引く。
映っていたのは近畿のとある交差点で、あたしたちには全く関係のない場所。
あのときの道路じゃない。
それはわかってる。
なのに、まるで磔にされたように、体が動かなくて……。