クリアネス

シルバーリングが、薬指の先端に触れる。


ひんやりとした感触が指先に伝わり、それは徐々に移動して、あたしの薬指を通った。



「俺は女の人に指輪をプレゼントするのなんか初めてだし」



まるで聖なる儀式のように、するりとあたしの左手に納まる指輪。



……あたしだって、

男の人から指輪をもらうのは、生まれて初めてだよ……。



「あっ!! ダメだ!!」



いきなり叫んだレオに、ビクッとした。



「な、何よ」


「さくら! やっぱり右手にしよ」



そう言って、レオは今あたしにつけたばかりの指輪を、強引に左手の薬指から抜き取る。


そしてなぜか反対側、右手の薬指にはめた。



「……はあ!? 何なの?」



あたしは自分の右手にちゃっかり納まったシルバーリングを見て、首をひねった。


だって、ペアリングって言ったら普通、左手の薬指でしょう?



「で、俺は左手ね」


「なんで自分だけ?」


「いいから、いいから」

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