クリアネス

「……どうしたの? 急に」



体を押して離し、レオの顔を見る。


そこにはいつも通りの、やんちゃな笑顔があった。



「なあ、海行こっか」



突然の提案。


あたしはもちろん、首を縦に振った。



あたしたちはバスに乗って、海に向かった。



ずっとつないだままの手で、シルバーリングが重なり合って光った。








バスを降りて、思わず目を細めた。


降りたての粉雪のような真っ白い砂浜は、夏の太陽を容赦なく照り返す。


海は青く澄んで、今すぐ飛びこみたいくらいだ。



だけど……。



「人、多すぎ!!」



ビーチを埋め尽くすほどのパラソルの数に、あたしとレオは思わず声をそろえて叫んだ。



「あ~、シーズン中だから仕方ねーのかな」


と、レオが苦笑する。


まあ、こんなもんだ。


石垣島にあったようなプライベートビーチには、めったに出合えないのだろう。



あたしたちは砂浜を後にして、とぼとぼと海岸沿いの道路を歩いた。


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