クリアネス
「あたし、飲み物買ってくるね」
そう言って立ち上がると、
「あ、俺、行こうか?」
コウタロウはベッドから体を起こして言った。
「最近だいぶ動けるようになってきたからさ」
「いいよ、ゆっくりしてて」
「そう? じゃあ俺、コーヒーよろしく」
「了解」
病室を出て、ナースステーションの近くの自販機に向かう。
いつの間にかすっかり顔見知りになっていた看護師さんたちと、すれ違うたび軽く会釈した。
「今日もお見舞い? 感心ですね」
もう何度も耳にしてきた、そんな台詞。
お見舞い?
感心?
違うよ。
あたしがしているのは
……“懺悔”
容赦なく押しつぶしてくる濃い闇から解き放たれたくて
あたしは必死でもがいているだけなんだ。
「これ、落としましたよ」
「え?」
自販機の前で小銭を取り出していたら、患者らしき男の人があたしの隣に立った。
そして血管の浮き出た細い腕を伸ばし、一枚の紙をあたしに差し出した。