クリアネス
……外すんだ。
そして、前と同じ日々に戻るの。
「外せる……っ」
だって、そうでもしなくちゃ……。
今も目を閉じればあの子の顔が浮かぶし
声もハッキリ覚えているし。
思い出は何ひとつ、色あせてくれそうにないんだから……。
リングをつかんだ指に力を込めて
一気に引き抜いた。
2カ月ぶりに裸になった
右手の薬指。
「……跡、が……」
日焼けした手に、指輪の跡がはっきりと白く残っていた。
「……っ」
胸の、一番奥の場所が
忘れようとしていた愛しさでいっぱいになる。
レオを失った夏の日。
独りぼっちだった、この2カ月。
寂しかった。
不安だった。
だけどこの体には確かに、レオの証が刻まれていて……。
一緒に、生きていて……。
――『忘れないで。
さくらの右側には、いつも俺がいるってこと』――