クリアネス
そう。
そうだった。
「レオ……」
あたしたちは、今も手を離してはいないんだった。
「レオ……レオ……」
薬指に口づけて、何度も名前をつぶやいた。
固く閉じた瞳から熱がこぼれる。
ずっと凍っていた涙が、流れ出す……。
「……こうなると思ってたよ」
そう言いながら、コウタロウはあたしの髪をくしゃくしゃとなでた。
「ごめん……、コウタロウ」
「いや、謝られるのはよけいつらいな。謝られたら、許さなきゃいけなくなるだろ」
コウタロウはその大きな手をシーツの上に戻し、天井を見上げた。
「ごめん……」
「だ~から! 謝るなって!」
パシッとあたしの頭をはたいて
「すぐに許せるほど俺は心広くないからな」
そう言ったコウタロウの瞳が、優しく微笑んだから。
あたしは精一杯の気持ちで、涙に濡れたほおを持ち上げた。
もう二度と、髪をなでてくれることはないだろうけど
大好きだった温かいまなざし。
ごめんと謝ることができないのなら、せめてこの言葉だけは伝えるよ。
「……ありがとう」
今、心の底から思う。
今日まであたしを愛してくれた人に
数え切れない感謝の気持ちを。