クリアネス


それから1週間後

コウタロウは無事に退院の時を迎えた。



あたしは病院から少し離れた公園で、ひとり空を見上げてみた。



薄い水色に、うろこ雲がやわらかく浮いて

都会の空だってなかなか捨てたもんじゃない。



けどね。



ビルの上に広がる空じゃなくて

もっと広いパノラマの世界を、見たくなったんだ。















「運ぶ荷物はこれだけでいいんですか?」



ツナギのユニフォームに身を包んだお兄さんが、よれた袖で汗をふきながら言った。



「はい。他は処分しますから」


「かしこまりましたー」



威勢良くそう言って、引越し業者のお兄さんは最後の荷物をかつぎ出す。



すっかり殺風景になった部屋で、あたしはひとり、タバコに火をつけた。


そして、ぐるりと空間を見回した。


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