クリアネス
オーナーが言っているインタビューとは、先月発売された沖縄情報誌のこと。
その中の“離島に移住した人々”というコーナーで、あたしは取材を受けたのだ。
「ほんとほんと。特にあのセリフが好評なんだよね。
えっと、あれ……与那国に移住を決めた理由」
「“夕日”ですか?」
「そう! 日本で最後に沈む夕日を見ることができるから、ってやつ」
ポンと手のひらを叩いてオーナーが笑った。
「……ほんと、オーナーには感謝してます。この宿で雇ってもらったおかげで、こうして三食布団付きの生活が与那国でできるんですから」
そう言って、あたしはオーナーから掃除機を奪い返す。
「だから休みの日でも、空き部屋の掃除くらいはさせてください」
あたしが与那国で暮らし始めて、もうすぐ3度目の冬が来る。
年間を通して太陽が支配するこの島の、短い冬。
あたしは島の中でも比較的新しいこの民宿で、ヘルパーとして働いていた。
関東から移住してきたオーナー夫妻は気さくな人柄で、まるで家族のように可愛がってくれる。
奥さんの佳代子さんは与那国の海に沈む海底遺跡に魅了され、移住してきたのだそうだ。