クリアネス
きれいになった部屋で、ふぅっと息をついて、あたしは掃除機のプラグをコンセントから引き抜いた。
オフシーズンの今は空き部屋が多い。
島が本来の静けさを取り戻す、わずかな期間だ。
あたしは人気の少ないリビングに入り、熱いコーヒーをいれた。
長期滞在している常連のお客さんと少し話し、どちらからともなく黙り込み、テレビに見入る。
こんな島のゆったりした空気が、最近は結構身についてきた。
再放送のバラエティ番組には、ちょっと有名な日本人の格闘家が出演していて
こんな時思い出すのはあの子のこと。
格闘技なんか興味無かったはずなのに、知らず知らずのうちにあたしは知識を身につけていたらしく
今じゃ試合が放送される日はお客さんたちと泡盛を飲みながら、テレビの前に陣取ってるくらいだ。
そして……
あの子も今頃どこかのテレビの前で、でっかい歓声を上げているのかな。
そんなこと、考えるんだ。
「さくらさん、ごちそうさま」
一緒にコーヒーを飲んでいた常連さんが立ち上がり、空いたカップを流し台にのせると、部屋に戻っていった。
ひとりになったリビングで、あたしは冷めかけたコーヒーを飲み干し瞳を閉じた。
レオ……。
元気にしていますか?
あたしにとっていろんな出会いがあった、この2年半。
貴方の中の時間は、どんな風に流れていましたか?