クリアネス

あたしは携帯を手に取って、今朝届いたメールを見た。


差出人は、懐かしい昔の恋人。



【そろそろあいつのこと忘れたら? 
俺はさくらを迎えてあげるくらいなら、いつでもできるけど?】



あたしは慣れた手つきで親指を動かし返事を打つ。


今はもう、気持ちは揺らがない。




【ありがと。だけどあたしはこの島で彼を待つよ。

だってあたし……彼を失う気が、全然しないんだよね】






朝起きて最初に思うのはレオのこと。


寝る前に月に祈るのもレオのこと。


夢の中じゃ、手をつないで歩いていたりもするんだ。



だから当分、忘れそうにないよ。








――『ツツモタセ』



今も、貴方の声をはっきりと覚えている。





――『眠いから、一緒に寝よ。でさ、起きるまで寝とこうよ』



貴方の体温を、今も覚えている。





――『ぼくは、透明人間になりたい』



貴方の弱さを、覚えている。





――『俺、仕事以外でそうゆうことする気になれない』



貴方の闇を、覚えている。


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