クリアネス


……嘘だと言われた方が納得する。



景色は尋常じゃないくらいきれいだし

心臓はいつ止まってもおかしくないくらい暴れてるし。



でも、目の前にいるのは、待ちこがれた人で……。



「嘘じゃないよ」



こまくを揺らしたのは、あたしの記憶より少しだけ低くなった声。



……待ってた。


ずっと待ってた。



だけど、ダメだ。


頭が混乱して、わからないよ。




だって、目の前がゆがんで、よく見えない。





「……迎えに来た」




抱きすくめられたのと同時に、瞳から熱いものがこぼれた。


そのとたんに視界がクリアになって……。




「レ……オ……」



確かめるように、名前を呼んだ。



「……レオ」


「うん」


「あ……会いたかった……」


「うん」



「会いたかったよっ……」





しがみついて大声で泣くあたしを

レオはずっと、泣きやむまで抱きしめてくれた。






レオ。


髪が少し短くなって

背も伸びたね。



だけどちっとも変わらない。



大好きだった温かい腕の中は……。




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