クリアネス

抜けられない? 


一生?



別にいいよ。

これまでのあたしの人生とたいして変わらないから。



それに……



「さくらちゃーん。お客さん入ったよ」


「はーい」



それに商品なら、商品としての価値があるじゃない。




「はじめまして。さくらです」




……もしかしたら、やっとあたしは満たされるのかもしれない。


そう思った。







風俗を始めてからは、あっという間に全てのローンを返済した。


1年働いて、ヘルスを辞めた。


それからは自分の部屋で、個人的に客と取引するようになった。



だからあたしは、今も商品として存在することができる。




不思議と、あたしは衝動買いをしなくなった。


今日みたいなのは久しぶりだ。



今も定期的に得られる高額の収入は、使い道もなく銀行に預けられるわけでもなく、鏡台の引き出しの中で眠っている。

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