クリアネス
あの、無造作に詰め込まれた、一万円札の束。
吹けば飛んでいくただの紙くずのような束。
あのお金は、早く使い切らなくちゃいけない。
あたしは意味不明なあせりを感じている。
買い物から帰ると、とたんに疲れが押し寄せた。
なだれ込むようにソファに身を沈め、横に転がった戦利品の山を見る。
その量に今さらながらゾッとした。
このまま眠ってしまいたかった。
だけど夜には、コウタロウたちと飲み会の約束が入っている。
仕方なく、あたしは化粧をさっと直して家を出た。
20分ほど遅れて飲み会の会場に入ると、すでに大学仲間が数人集まっていた。
テーブルにはグラスが並び、溶け切った氷が飲み残しのカクテルを薄めている。
中学生の頃、理科の実験で使ったナントカ液みたいだ。
「さくら、遅いってー」
あたしが近づくと皆は顔をニヤつかせ、コウタロウの隣を空けた。
コウタロウは友達に小突かれながら、「痛いよ!」と大げさに反応した。
本当は嬉しいくせに~。
そんな風に、皆がからかう。