クリアネス
開放されたドアから朝の光が注がれて、そのまぶしさにあたしはまばたきする。
入ってきたのは、コウタロウだった。
「おはよ、コウタロウ」
彼は今日も、ぶ厚くて小難しそうな本を、小脇に抱えていた。
短めの髪は寝癖ひとつ無くて、そういえば無精ひげが生えているところすら、今まで見たことがない。
こっちこっち、とミカが手招きすると、コウタロウはその行儀の良い顔立ちをほころばせ、小走りで寄ってきた。
「おはよ、さくら」
今日も朝からさわやかな、あたしの恋人。
「おはよ」
さわやかすぎて、居心地が悪いくらい。
高校の時からだからたぶん、2年と10カ月。
周りの友人いわく『おしどりカップル』っていうやつを、あたしたちは続けている。