クリアネス
大きさはほとんどあたしと変わらないくせに、指が長くて少し節の張ったレオの手。
明らかに、女のそれとは違うものだった。
……男・男・男。
会場に着くと、中は男臭い男たちであふれ返っていた。
最近は格闘技ブームだというけれど、よっぽど大きな試合でもない限り、やっぱり客のほとんどが男性ファンらしい。
リングは思っていたより小さく、スポンサーの企業名が窮屈そうに書かれている。
それをぐるりと囲む客席では、いかにも落ち着かない顔で幕開けを待ちわびる男たち。
独特の煮詰まった空気に、あたしは早くも逃げ出したくなった。
「……ちょっと外でタバコ吸ってくるわ」
「何言ってんだよ、始まるって」
レオのその言葉を聞いていたかのように、大げさな口調で開会を告げるアナウンスが響き渡る。
歓声がわきあがり、観客はいっせいにリングにくぎづけになった。