クリアネス
「すごかったなー、あのカウンター!」
あまりに大きな声でレオが言ったせいだろう。
同じ車両に乗っている人たちのほとんどが、いっせいにこっちを見た。
行きの電車でもレオはよくしゃべったけど、帰りはそんなものの比ではなかった。
会場の熱気と興奮をそのまま引きずったレオは、何度もお気に入りのシーンについて熱く語り、時々ジェスチャーも加えて表現したりした。
いつの間にか、電車はあたしの住む町の近くまで来ていた。
「F駅、まもなくF駅に到着します」
鼻声の車掌のアナウンスが響く。
あたしが降りる駅より、2つ手前の駅だ。
「あっ…と、俺、ここだから」
そう言って、急にレオは立ち上がった。
「え? あんた、ここなの?」
「うん、そうだけど」
「……じゃあ、行きの電車もこの駅で待ち合わせすれば良かったんじゃない?」
「ん?」
「だって、わざわざうちの方まで来てもらったのって、レオにとっては回り道だったんじゃ…」
しどろもどろ言うあたし。
レオは首をかしげながら、
「さあ? わかんね。
俺バカだもん」
と笑った。