クリアネス

ピィー、と高い笛の音と共に、ドアが閉まろうとしていた。



「じゃあね」



そう言いながら、レオは猫のようなしなやかな動きで、閉まりかけたドアをするりと通り抜けた。



「あっ、ありがとうっ」



窓越しに言ったあたしの声は、ちゃんとレオに聞こえたのかわからなかった。








格闘技の試合自体ははっきり言ってつまらなかったけど、あの一日を思い出すと嫌な気持ちにはならない。


我ながら、不思議だ。



そんなことも忘れかけていた、4日後の昼下がり。


あたしはいつも通り、大学で仲間たちと昼食をとっていた。




最近増築されたこの食堂は真新しく、吹き抜けの開放的な雰囲気が気に入ってる。


天上まで届く大きな窓から昼の太陽が差し込み、白いテーブルの上で乱反射していた。

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