クリアネス

いつものようにあたしはコウタロウの横に座り、その周りに皆が座る。



話題が尽きることはないからついつい盛り上がってしまい、全員が食べ終わるまではかなり時間がかかる。



この日も流行りのミュージシャンの話に花が咲いて

角の席に陣取ったあたしたちは、なかなか立ち上がろうとしなかった。


まったく、いつも通りの光景だった。



そんな時、仲間の一人がふいに持ち出した、格闘技の話題。



それにつられて、


「あ、こないだ生で見てきたよ」


と、うっかり口を滑らせてしまったあたし。



「マジで!?」


いっせいに声をあげる友人たち。



スポーツは野球くらいしか興味の無いコウタロウも、驚いたようにこっちを見た。



「いいな、さくら。うらやましすぎてムカつくよ」


そう言ったのは、高校時代レスリング部に所属していたというアキヒト。



「格闘技のチケットって、何気に高いんだぜ」


続いてツヨシも割り込んでくる。



いつの間にかコウタロウ以外の全員が、この話題に参加していた。

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