クリアネス
「え? 高いの?」
「うん、下手なコンサートなんかより高いはずだよ」
「さくら、そんなことも知らずに行ったのか?」
「てか、誰と行ったんだよ」
「そんなの男に決まってんじゃん、なっ」
冗談っぽく言ったツヨシのその言葉で、場の空気は一気に凍りつく。
全員の視線が、恐る恐るコウタロウに向けられた。
「うん?」
うかがうようなあたしたちの視線に、コウタロウは少したれ気味な一重の瞳を丸くした。
「どうしたんだよ、みんな急に黙って」
まったく気に留めない様子で、穏やかに微笑むコウタロウ。
小首なんかも軽くかしげちゃったりして。
「……あ、いや、その、ハハハ」
わざとらしく笑って、ツヨシは冷めかけたカレーうどんをすすった。
笑顔を保ったまま、静かにコーヒーを飲むコウタロウ。
その様子を見て、皆がホッと息をついた。