クリアネス

そういえば、この子って家庭が複雑なんだっけ。


あの長屋に、昔は家族で住んでたのかな。


こうやって家族で食卓を囲むことも、昔はあったんだろうか。



聞いたら……怒る?



「――マジでキレるだろ?」


「えっ?」



突然のレオの言葉に、あたしはマヌケな声を出した。



「だからー、うちの店長。自分がタバコやめたからって、事務所まで禁煙にするとか言い出すんだもんよ」



フォークを振りながら、いつも以上に饒舌に語るレオ。


あたしはとっさに笑顔を作った。



「ああ、うん。ホントだね」


「だろ?」


「うん……」



笑顔が引きつっているのが、自分でもわかった。



どうしてだろう。


他人のことなんか、今まで少しも興味無かったのに。



そう、あたしが昔から「子供らしくない」って言われてきた原因のひとつは“周囲に対して冷めているから”らしいのだ。


それで何度となく、今までの彼氏とけんかしてきた。



……それがどうよ、今のこの状況。


目の前のガキンチョの過去なんかに、ちょっぴり興味わいちゃったりして。


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