クリアネス

そして彼は服を着ると、思い出したようにあたしにキスをして、一万円札を3枚テーブルの上に置いた。


本日のあたしのお値段、3万円也。


料金は客にそれぞれ決めてもらう。

他のお客さんがくれるのも、だいたい斉藤さんと同じくらいだ。




斉藤さんが帰った後、あたしはタバコに火をつけて窓際に座った。


そして

条件反射で向かいのビルに視線を走らせた。



彼――レオが、同僚と楽しげにおしゃべりしていた。



……笑っている。

レオのあの顔が、好きだなあ。


あたしは煙を吐きながら、彼の表情を余すところなく観察した。


でっかい目が、笑うと細い線になって、弧を描く。


どうやったらあんな笑い方ができるのだろう。




彼の本当の名前は知らない。


初めてその姿を見た時、たまたま彼はこっちまで届くくらいの大声で『ウルトラマンレオ』の主題歌を歌っていたので、そこから名前をつけさせてもらった。


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