クリアネス
ふぅふぅととがらせた唇から息を吹きかけるレオ。
カップからの湯気がレオの顔まで上がり、もともと滑らかな肌をさらにうるませた。
「よっしゃ! 行け! 行け!……あぁーダメだわ」
レオは、まばたきもせずにテレビを見ながら、動きの一つ一つにいちいち大声で反応する。
格闘技の試合って、興味の無い人間からすれば退屈だ。
あまりに暇すぎたせいだろう、あたしは知らない間にうたた寝していた。
カチャ、カチャ……
陶器のぶつかる音と、水道の音で目が覚める。
「……レオ?」
ソファで寝たせいで、背中と肩が痛い。
のろのろ起き上がると、キッチンの方にレオの後ろ姿が見えた。
「お。起きたか」
「何してんの?」
「食器洗い」
「珍しいじゃないの。雨降らせないでよ、髪の毛セット崩れるんだから」
「失礼だな」
つけっぱなしのテレビからは、深夜の音楽番組が流れていた。
どうやら3時間以上は眠っていたらしい。