クリアネス
「レオー。置いといてくれればいいから。明日の朝にでも洗うよ」
キッチンに向かって叫ぶ。
「えー? いいよ、オレやるし。さくら今日は、疲れてるだろ?」
「疲れてる?」
「うん、今日客呼んでただろ? 事務所から見てた」
――ドクンッと心臓が脈を打つ。
テレビでは、見たこともないビジュアル系バンドが、聞き取りにくい早口の歌を歌っていた。
ドラムの音と同じリズムで、あたしの心臓もせわしなく動く。
「見てたの……?」
「うん」
「事務所から?」
「うん」
「……ってことは、あんただって、仕事してたってことじゃん。どっかの女のとこ行ってんじゃん」
滑るように出てくる言葉を、止めることができなかったから
せめて軽い調子で言いたかったけど。
明らかにあたしの口調には、トゲがあった。
「どしたの? さくら。何怒って……」
濡れた手をTシャツのすそでふきながら、レオが歩み寄ってくる。