クリアネス

3カ月ほど前になるだろうか。


向かいのビルの、あの事務所らしき部屋にはいつも若い男の子がたくさん集まっていた。


いったい何をしているのだろうと疑問に思っていたら、


「出張ホストの事務所らしいわよ。汚らわしいわねえ」


と隣の山本さんがどこか楽しそうに言った。


あんたの隣の住民も売春婦だよ。
と言いたかったけど、わざわざ波風立てる必要はないなと、思いとどまった。



さて、出張ホストなんてものと初めて出会ったあたしは、その日から興味本位で向かいのビルの観察を始める。


とはいってもあの事務所の中でエロ情事が繰り広げられるわけではない。

なんせ出張なのだから。


すぐに飽きて、今度は彼らの観察日記を書き始めたが、これも面白くなくて3日でやめた。



そんな紆余曲折を経てあたしが目をつけたのが彼、レオだった。



レオはあの若い男たちの中でも、群を抜いて若かった。


明らかに一番若く、そして美しい。


さらさらの金髪が特徴的で目をひいた。


それがプリン頭になっているのを一度も見たことがないので、きっと彼はハーフか外国人なのだと思った。

もしくは、美容師の常連客がいるとか。



こうして彼を観察することが、ここ3カ月のあたしの日課になっていた。

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