クリアネス
第7章【衝動】
爆音。
耳をつんざくように、乱暴なくらい大音量の音楽。
フロアで踊る人たちとは少し離れたこの壁際の席が、最近のあたしの定位置だ。
「珍しいじゃん。さくらちゃんがひとりで来るなんて」
ビールを片手にしたリョウさんは、そう言って当然のようにあたしの隣に座った。
ここは、リョウさんと初めて会ったあのクラブ。
ミカと来ることがほとんどだったけど、今日は何となくひとりで来たかった。
「何かあったの? 彼氏とケンカとか?」
軽い口調でリョウさんが言う。
あたしは視線も合わさずに答えた。
「別に何もないよ。ひとりでリョウさんに会いに来ちゃ、変?」
「いや、嬉しい」
リョウさんのヒゲが、あたしの鼻先に触れる。
深いキス。
人目も気にせず、舌をからめ合う。
彼の、こういう手っ取り早いところが好きだ。
何のためらいもなくあたしを求めるところ。