クリアネス
「何だ、やっぱいんじゃん」
ほぼ同じ高さ。
道路を隔てた向こうの窓。
予想した通りの人物が、顔を出していた。
「……やっぱいんじゃん、じゃないわよ。わざわざ大声で呼ばなくたって、電話してくればいいのに」
「そう? わざわざ電話しなくたって、大声出せば聞こえるのに」
「あんた、相変わらず生意気」
あたしは大げさにあきれたような表情を見せ、カーテンを閉めた。
すぐに電話が鳴った。
「……もしもし?」
「何もカーテン閉めることねーだろ」
「あんたが生意気言うからじゃない」
「だから、こうして電話したじゃん」
「それが生意気だっての」
「でも、良かった」
「……何が?」
「やっとさくらが俺の電話に出てくれた」
すねたようなレオの声。
あたしの胸はさらに詰まる。
ダメだ。
レオ、可愛すぎるよ。
反則……。
あたしは、何だかくすぐったい気持ちを抑えながら、カーテンを少しだけ開けて、向かいのビルをのぞいた。