クリアネス
レオは携帯片手に、窓辺でタバコをふかしている。
太陽が沈んだ風景の中で、レオの金色の髪だけが、唯一光を留めているように見えた。
「でさ、さくら。今から行っていい?」
「……いいよ」
あーあ。
あんなに会うのをためらってたのに、いざ顔を見ちゃったら許してしまうんだよな。
ほんと、あたしってレオに弱い。
「あ! レオ! うちの冷蔵庫、今ビールしかないんだ」
「オッケー。買ってく」
電話を切った後、あたしはベッドの上に置きっぱなしにしてあった卒業文集を、クローゼットの中に隠した。
5分ほど経って、インターホンが鳴った。
「よぉ、久しぶり」
「……よぉ」
まるで親戚の家に上がる時のような慣れたしぐさで、レオは靴を脱ぎ捨て、ずかずかとリビングに入っていく。
「ウーロン茶でいいだろ?」
「あ、うん。ありがと」
「俺はビールもらうね」
そう言って、これまた図々しいしぐさで冷蔵庫を開けるレオ。
「マジでビールしかないじゃん」
と笑いながら、彼は一番奥から冷えた缶を取り出した。