クリアネス
「ん?」
あまりに凝視しすぎたせいか、レオがいぶかしげにあたしを見た。
「ごめん……別に、何でも、ない」
たどたどしい日本語が、部屋の空気をしらけさせる。
必死で考えながら答えたくせに、これといってうまい言いわけも見つからない。
欲望は治まる様子を見せず、あたしの下半身をえぐる。
もっと……奥までえぐってほしい。
内側から心臓をつかんで、体中に流れていく血を止めてほしい。
でなきゃ、ドクドクという血液の音が、レオにまで聞こえてしまうと思った。
あたしは、せっかく買ってきてもらったウーロン茶を残して、冷蔵庫からビールを出した。
「おっ、さくらも飲むか」
レオは明らかに様子のおかしいあたしに気を使ってか、おどけた表情で乾杯のポーズをきめる。
つられて腕を伸ばし、缶ビールで乾杯すると
あの細く筋張った指があたしの爪とぶつかった。
その、小さく触れた部分から……またあふれ出す。
ダメだ。
止まらない。
考えるより先に動いたのは、この体だった。
あたしはレオの指を両手で握りしめていた。
それも、まったく無意識に。