Five Minutes
“只今、先行列車がこの先の駅に停車中です。列車間隔確保のため、しばらく停車いたします…”
と、俊次くんの疑問に答えるかのように、絶妙のタイミングで流れる車掌のアナウンス。
(オイオイ、さっさと行けよ、先行列車さんよォ…) 俊次くんは舌打ちしたくなりました。
(なんでこうなるわけ?)
この人間缶詰め状態から一刻も早く脱出したいんだよ俺は…。マジで五分が限界だぁ… あーあ、いつもだったらこういう時はケータイのゲームとかでやり過ごすのに、今日に限ってこんなに混んでいやがるから、ケータイを取り出すこともできねぇし…。ったく、最悪だよ。
(いつまで停まってんだよ、早く走れって)
ところが電車は、そんな俊次くんの切なる願いをスルーするかのように、全く動こうとしません。
俊次くんはだんだんとイライラしてきました。
大学に遅刻するという不安より、この殺人的とも言える異常事態に我慢がならなくなってきたのです。
(早ようせぇ、って…)
俊次くんは関西出身でもないくせに、本気で腹が立つと何故か関西弁が出るクセがありました。
前の駅を出てから、明らかに五分はたっています。
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