Five Minutes
いつもならば、今頃はとっくに駅に着いて改札を出て、大学へ向かう道を歩いている頃です。
(運転手のヤツ、わざと停まってんじゃねぇだろうな…)
そんな馬鹿げた疑いも、この状況下では真実味を帯びて感じてくるから恐ろしいものです。
(朝のこの時間帯に急いでいないヤツなんていねぇことくらいわかってんだろ…)
と、その時。
シャカシャカシャカ…。
すぐ近くで、ヘッドホンの音漏れ。
臨時停車の苛立ちを、音楽で紛らそうというのでしょうが…。
(音、デカすぎだっつーの)
ベース音どころか、歌声までバッチリ聴こえてきます。
つまり、フツーにスピーカーから流れてくる曲を聴いているのと同じ状態なわけで…。 (誰だよ、るっせーな…)
首を曲げて犯人を見つけようにも、現在(いま)の状態では当然できっこありません。
こういう極限状態で強制的に聞かされる音楽は、かなりの拷問です。 辺り構わず音をまき散らしている本人は悠々としていやがるんだろうな、と思うと、俊次くんはたまらなく腹が立ってきました。
(てめぇばっかいい気分でいやがって)
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