Five Minutes
ハイテンポなベース音が俊次くんのイライラを更に促進させ、全身はカッと暑くなり、吹き出した汗が服にベットリとはりついて、もう気持ち悪いことこの上ありません。
しかも、電車はまだ動き出しそうにありません。
ギュウギュウ詰め。
熱気。
吹き出す汗。
ヘッドホンの音漏れ。
あまりにも最悪すぎるシチュエーションが、俊次くんを容赦なく苛みます。
やがて、音楽がピタッと止みました。
一曲終わったのです。
自分ばかりでなく、周りもホッとしたらしいことを俊次くんが空気で感じた時…。
ジャーン、シャカシャカシャカ…。
(ゲッ…)
案の定、二曲目がおっぱじまってしまいました。
俊次くんが、周りの空気が再び硬直するのを感じると同時に、胃にズンと重いものがくるのを感じた時でした。
「きみィ、いい加減にしたまえ」 という一喝が、すぐ近くで炸裂しました。
(え?)
ピタッと止む音楽。
俊次くんは苦痛のあまり伏せていた目を上げました。
「さっきから喧しいんだよ、それ」
(あ…)
声の主は、あの足を踏んづけたオッサンでした。
オッサンがマジで怒っているらしいことは、頭の間から見える横顔からもよくわかります。
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