光の雨
「………無い…」


昇降口にしゃがんで、地面を見つめる私。だけど、財布らしきものは見当たらない。

やっぱりここじゃ、無いのかなぁ…。

ぼそぼそ言いながら、地面に手をついていろんなとこを見てみる
一年生たちの視線が痛い。

うわ、あたし不審者みたいじゃん…

なんか、どんどん惨めな気持ちになってくる。クスクスと、笑い声も聞こえてくる。いくら探しても、財布は見つからない。

…泣きたくなってきた。みかみさんとアキ、待たせてるんだよね。早く戻んなきゃ…。

半ベソをかきながら探していたその時、ポンポン、と誰かに肩を叩かれた。

「ねぇ…ちょっと、いい?」


振り向くと、初めて見る顔。背が高い、男の人。やわらかそうな黒髪、前髪は真ん中で分けてある。目は、二重で、まつげが長い。すっごい美人!!ちょっと、遊び人みたいだけど。
この学校は、上靴のラインは学年ごとに違くて、一年は黄色、二年は赤、三年は緑。で、その人の上靴のラインは、黄色だった。

えっ!後輩!?この人が年下!?見えない!!…てか、この人、何の用だろう?


「…なんですか?」

「何か、探してるんですか?」

「あ…えっと、財布を探しています」

「財布って、これですか?」

「え…」


見ると、その後輩の手に握られていた財布は、黒地に白い水玉模様。まぎれもなくあたしの物だった。


「…あ!そう!そうです!!」

「よかった。持ち主を探していたんです。どうぞ」


そう言って、あたしに財布を渡す。にっこり微笑んでいる顔は、とても綺麗で、少しだけドキッとした。

< 7 / 13 >

この作品をシェア

pagetop