チェリーをあげる。

朝食後。


私達はちーちゃんのおばさんに散々お礼を言って宿を後にし、


しばらく来ることのないだろう海辺の町を少し散策してから、


そのまま高速道で帰途に着いた。




お昼はどこかのサービスエリアで取ったんだけど、


やっぱり渡さんは無言状態で、4人の間には重い空気が漂っていた。




数時間後。


車が高速を下りると、最初に渡さんが彼の寮の前で下ろしてもらって、


次に私がアパートまで送ってもらった。






ブルーな気分で部屋に戻った後。


一息つく間もなく、バッグの中の携帯電話がうるさく鳴り響いた。



見ればデイスプレイには“渡さん”の文字が…。




「もしもし…?」




ドキドキしつつ通話ボタンを押すと、




〈あ…、もうアパートに着いた…?〉




渡さんのそんな声が聞こえてきた。
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