チェリーをあげる。
目が覚めたとき。
目の前にはうちわを手にしたさっきの男性の顔があった。
「あ…、気がついた…?」
そう言われ自分の居場所を確認すると、
私は畳の上に敷かれたふとんに横になっていた。
衣服に乱れはない。
バッグもちゃんと脇に置いてある。
「あ…、すみません、私…!」
思わず飛び起きると、おでこにのせてあった生温いタオルが膝の上に落ちた。
「…もしかして私、あれから倒れちゃったりしたんですか?」
そう確認すると、
「そうだね…。君、いきなり倒れちゃうんだもん…。どうしたのかと思ったよ」
彼は私をうちわで扇ぎながら笑った。
「あ…、俺工学部の2年で、柄沢伸機(カラサワノブキ)って言うんだ。“伸”って呼んでよ」
「あ…、私は若井雛っていいます…。××大の1年なんですけど…」
そう互いに自己紹介すると、伸さんという人は、
「へー、そうなんだ…。あ…、ちょっと待ってて。今なんか冷たいもの買ってくるから」
そう言って部屋を出て行った。