チェリーをあげる。

目が覚めたとき。


目の前にはうちわを手にしたさっきの男性の顔があった。




「あ…、気がついた…?」




そう言われ自分の居場所を確認すると、


私は畳の上に敷かれたふとんに横になっていた。



衣服に乱れはない。


バッグもちゃんと脇に置いてある。




「あ…、すみません、私…!」




思わず飛び起きると、おでこにのせてあった生温いタオルが膝の上に落ちた。




「…もしかして私、あれから倒れちゃったりしたんですか?」




そう確認すると、




「そうだね…。君、いきなり倒れちゃうんだもん…。どうしたのかと思ったよ」




彼は私をうちわで扇ぎながら笑った。




「あ…、俺工学部の2年で、柄沢伸機(カラサワノブキ)って言うんだ。“伸”って呼んでよ」


「あ…、私は若井雛っていいます…。××大の1年なんですけど…」




そう互いに自己紹介すると、伸さんという人は、




「へー、そうなんだ…。あ…、ちょっと待ってて。今なんか冷たいもの買ってくるから」




そう言って部屋を出て行った。
< 120 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop