チェリーをあげる。
「何それ」
伸さんはけらけら笑ったけど、
急に現実に引き戻された私の目からは、とたんに涙がこぼれていた。
「えっ…、雛ちゃん…?ちょっとどうかした…?」
伸さんがあわてて私の脇に来たとき、
「う…」
私は更に泣いてしまって、ポケットからハンカチを出していた。
すると伸さんはとっさに言った。
「どうした…?もしかして渡となんかあった…?」
…と、
そのとき。
私が伸さんに答える間もなくドアが開いて、
「雛ちゃん…?」
ワイシャツにネクタイという、これまでに見たことのない格好をした渡さんがいきなり目の前に現われた。