チェリーをあげる。
「わ…、渡さん…?」
びっくりして目を見開くと、
横に座っていた伸さんが渡さんに言った。
「渡…。お前今日は夜まで帰って来ないんじゃなかったっけ…?」
「そのつもりだったんですけど、ちょっと忘れ物しちゃって、昼休み使って帰って来たんです」
渡さんはそう言いながら、自分の机らしきところをガサゴソあさっていた。
それから私を一瞥すると、渡さんははあっとため息をついた。
「なんでこんなとこまで来てるわけ…?俺の気持ちはきのう電話で言ったはずだろ…?」
「あ…、あの、私…」
思わず立ち上がり、なんとか彼に謝ろうとしたけど、
「ごめん。悪いけど俺ちょっと急ぐから」
渡さんはそう言って部屋を出て行ってしまった。