チェリーをあげる。
こうして私は一度帰宅し、夜の8時にまた寮に戻って来ることになった。
渡さんとホントに話すことになれば、長丁場の修羅場になるのは簡単に予想がつく。
渡さんの冷たい態度を思い出すとドキドキするけど、このまま黙って引き下がるわけにはいかない。
夕方、
お風呂に入ってご飯を食べると、私は着替えて化粧をして、再び渡さんの寮へと向かった。
約束の時間に伸さんと落ち合うと、
彼は「部外者はホントは夜中に入れないんだ」と言いながら、裏口からこっそり中へ通してくれた。
サンダルを持って再び彼らの部屋に入ると、
渡さんや伸さんとこの部屋を共有しているというふたりの男性に会った。
ひとりは渡さんと同じ1年生で和(カズ)さん、
もうひとりは伸さんと同じ2年生で敬(ケイ)さんといった。
どうやらこの部屋の住人は互いに通称名で呼び合ってるらしい。
和さんと敬さんは
「事情は伸さんから聞きました」
「渡と仲直りできるといいですね」
とか言うと、
「くれぐれも他の学生に見つからないように頼むね」
と私に釘を刺した伸さんと一緒にすぐ出かけてしまった。