チェリーをあげる。
08 千載一遇のチャンス?!
渡さんの地元に旅した数日後。
ある日の夕方、私は渡さんから電話をもらった。
携帯電話のディスプレイに渡さんの名前が出たのを見て、
渡さんがまだ自分の番号を消去せずにいてくれたんだと思うと嬉しかった。
…けど、
礼さんから連絡をもらった渡さんが何らかの目的を持って電話してくれたんだろうと思うと、
通話ボタンを押す指が震えた。
「もしもし…?」
ドキドキしながら電話に出ると、聞こえてきたのは渡さんの不機嫌そうな声だった。
〈あ、雛ちゃん…?〉
そのトーンから、渡さんが怒ってるのが目に見えた。
「渡…さん?」
思わずびくついてしまう。
〈今、ちょっといい…?〉
「あ…、うん…」
もしかして、私が礼さんに会いに行ったことを怒ってるのかな…?
「な…、何…?」
おそるおそるたずねると、案の定、渡さんの用件は礼さんの一件だった。
〈きのう元カノから連絡があったんだけど…、雛ちゃん、俺に黙って俺の元カノに会いに行ったんだって…?〉
「えっ…」