チェリーをあげる。

再び男に目をやると、彼は随分やせていて、ひどく顔色が悪かった。


長身で一見若そうに見えるけど、グレーがかった髪の毛からして、おそらくアラフォー世代だろう。




「もしかして、あの人がよっこの彼…?」




そうたずねると、よっこは苦笑いした。




「うん…。正(タダシ)って言うんだけどね、2ヶ月くらい前に脳をやられちゃってさ…。今この病院に入院してるんだ…」


「え…」




そんなこと、何も聞いてなかったから驚いた。




「脳卒中とか脳梗塞って言うの…?なんか脳の大事なところがダメになっちゃったみたいでさ…」




よっこはそう言って鼻をすすり、


「ちょっと場所変えよう」と言って、私をひとつ下の階にあるデイルームへと連れ出した。
< 219 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop