チェリーをあげる。

せっかくのデートなのに、邪魔しちゃ悪いよね…。




「じゃあ私、今日はこれで帰るね」




私はそう言って席を立った。




「ごめんね、わざわざこんなところにまで付き合わせちゃって…」




よっこは申し訳なさそうな顔をした。




「全然。こっちこそいろいろ聞いてもらってありがとね」




私はよっこに手を振った。



すると正さんが私のところへやって来て、左手を差し出した。




「これからも容子のこと、よろしく頼みます」




右手が使えないのか、右手は彼の膝の上にぺちゃんと置かれていた。




「あ…、はい…」




こちらも左手を出して、彼の大きく白い手と握手をした。



冷たくゴツゴツした正さんの手に、なぜだかまた泣きそうになった。




そしてその手を離した瞬間、私はつい彼にたずねていた。




「あの…、つかぬことをお訊きしますが、正さんは今幸せですか…?」


「え…?」
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