チェリーをあげる。
「その…、よっことエッチとかできなくても、正さんは幸せですか…?」
「え…?」
正さんは私の質問に目を瞬かせていたけど、
しばらくして小さくうなずくと「うん…。幸せだよ」と笑った。
「そうですか…」
私は目に浮かぶ涙をこらえながら、必死で笑顔を返した。
「わかりました…。それを聞けてよかったです…」
私はそう言い残すと、エレベーターへと一気に走った。
正さんの言葉を聞いて、自分が恥ずかしくなったからだ。
病院を出た後も、帰りの電車に揺られている間も、
よっこの言葉と正さんの言葉が頭から離れなかった。
…男の人と付き合ってエッチすることばかり考えてた私にとって、
よっこ達カップルはある意味衝撃だった。
確かに世の中には、
相手の事情でエッチできないカップルもたくさんいるはずだよね…。
それでもよっこと正さんのように、体のつながりナシでも幸せにやってる人達もいるんだ…。
よっこは正さんの状況をよく理解しているみたいだった。
…それに比べて、私はなんだろう。
渡さんの気持ちとか事情とか何も考えないで、彼にひどいことしちゃったよ…。