チェリーをあげる。

「その…、よっことエッチとかできなくても、正さんは幸せですか…?」


「え…?」




正さんは私の質問に目を瞬かせていたけど、


しばらくして小さくうなずくと「うん…。幸せだよ」と笑った。




「そうですか…」




私は目に浮かぶ涙をこらえながら、必死で笑顔を返した。




「わかりました…。それを聞けてよかったです…」




私はそう言い残すと、エレベーターへと一気に走った。



正さんの言葉を聞いて、自分が恥ずかしくなったからだ。






病院を出た後も、帰りの電車に揺られている間も、


よっこの言葉と正さんの言葉が頭から離れなかった。




…男の人と付き合ってエッチすることばかり考えてた私にとって、


よっこ達カップルはある意味衝撃だった。




確かに世の中には、


相手の事情でエッチできないカップルもたくさんいるはずだよね…。



それでもよっこと正さんのように、体のつながりナシでも幸せにやってる人達もいるんだ…。




よっこは正さんの状況をよく理解しているみたいだった。




…それに比べて、私はなんだろう。




渡さんの気持ちとか事情とか何も考えないで、彼にひどいことしちゃったよ…。
< 227 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop