チェリーをあげる。
礼さんは笑った。
〈ほら、渡って頑固で、こうと決めたら絶対譲らないヤツでしょ…?〉
「はい…」
〈こうなってくると私もあなたに協力して、あの子の頑なな心をなんとかしたいと思うわけ…〉
「え…?」
〈どうせあなたも夏休みでしょ…?だったら2、3日こっちへ来て、あの子の心を動かすための作戦でも練らない…?〉
「えっ…」
〈ちょうど明日から夏祭りが始まるから、うちに泊まってゆっくりしてけばいいわ…。ふたりで話せば、何か渡を変えるヒントが出てくるかもしれないし…〉
「はあ…」
〈何なら渡の昔の写真とか見せてあげるし〉
「えっ…?」
渡さんの昔の写真…?
〈どう…?〉
「あの…、渡さんの昔話とかも聞かせてもらえるんですよね…?」
〈もちろんよ〉
「いっ…、行きます…!ぜひ行かせてください…!」
私の返事に、礼さんは再び笑った。
〈オッケー。じゃあ待ってるから〉
…こうして私は翌日の高速バスの予約を取り、
再び渡さんのふるさとへ旅立つことになった。